2011年4月17日日曜日

イタリア人女性 防護服も着ずに原発20km圏内で犬猫を救出

福島第一原発事故の影響で、帰国したり、西日本に避難したりする外国人が多いなか、この女性は違った。被災地に取り残された、見ず知らずの人のペットを救うため、放射能汚染も恐れず、福島へと向かったイタリア人女性のイザベラ・ガラオン青木さん(47)。
 イザベラさんは、4年前にペットホテル「アニマルガーデン新潟」を開業。同時に、飼い主がやむを得ない事情で育てられなくなったペットを、空き室を利用して保護する活動を始めた。現在、230匹のペットが保護されており、このうち震災で被害を受けた犬と猫があわせて60匹ほどいるという。
 震災から2週間が過ぎた3月下旬。原発事故による自宅からの避難を余儀なくされた福島の被災者から、イザベラさんの施設に電話がはいった。
「すぐ家に帰れると思って、原発20km圏内にのんちゃん(飼い犬の名前)を残してしまったんです。連れて帰ってとはいいません。もし行く機会があったら、せめて、せめてえさと水だけでも残してきていただけませんか」
 電話の主は泣いていた。イザベラさんは、住所と犬の特徴を飼い主に聞いたが、胸の中では、その犬を救い出す覚悟を決めていた。
「人がいない街で、水も飲めず、えさも食べられずに死んでいく動物たちを思うとかわいそうだし、飼い主さんの気持ちを思うと放っておけません。すぐに仲間のボランティアとふたりで、福島県に向かいました」
 すでにニュースでは被曝の危険性が報じられていた。イザベラさんも現地の放射能汚染の話は知っていたが、防護服は用意しなかった。
「防塵マスクは着けたけど、着ている服を洗えば問題ないだろうと考えて、普段着のまま行きました。きっと、短時間なら大丈夫。それよりも動物たちのほうが心配で…」
 現地には夜到着した。途中の道で立ち入りを規制されるかと思ったが、夜だったためか、誰に止められることもなく、そのまま車で20km圏内にはいることができた。無人の街。暗がりの道路には首輪をして、やせおとろえた犬や猫たちの気配があった。
 教えられた住所に着くと、庭先から「ワン、ワン」とのんちゃんの吠える声が聞こえてきた。足元を懐中電灯で照らしながら、声のするほうに急いだ。やせ細った白い毛の柴犬。飼い主からは、他人にはなつかないと聞かされていたが、鎖を外してやると、急におとなしくなり「クゥーン、クゥーン」と鳴き声を上げた。2週間ぶりに触れあう人のぬくもりを、のんちゃんはうれしがっている様子だった。
「よくがんばったね、のんちゃん。もう大丈夫だからね」。用意していたビーフジャーキーをあげると、あっという間に平らげ、ドライフードもガツガツ食べた。
「ほかにも街では犬2匹と猫1匹を見かけましたが、ひどくやせていました。保護しようとしたけど捕まえられなかったので、えさと水を置いてきました」
 のんちゃんは、現在、新潟で飼い主と再会する日を待っている。
※女性セブン2011年4月28日号

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