2011年8月21日日曜日

ジャジーな1枚(40)やがて訪れる世界人口70億人の中から迎える「親愛なるきみへ」 メリッサ・モーガン「あなたに出逢えて」


出会いとは不思議だ。世界の人口は、この10月に70億人台にも達しようとしている。ひとりの人間が一生の間に出会えて、知り合えて、それなりの仲になれる相手の数なんて、高が知れている。友人としても恋人としても人生の同伴者としても、理想の相手というのはいるのだろう。いや、必ずいるはずだ。しかし、そんな相手と出会える確率は、恐ろしいほどに低い。いや、世界なんてとんでもない。日本国内にうごめく1億2800万人近い人間の中から、理想の相手と巡り会う確率だって、気が遠くなるほど低い。でもね、あきらめちゃいけない。あきらめたら何も始まらないんだから。
 じゃあ、どうすりゃいいんだよっていう人は手始めにメリッサ・モーガンの「あなたに出逢えて」=写真=を聴いてください。理想の相手は、ある日突然目の前に現れる。それまではファンシー・フリー、つまり特定の恋人がいなくて、さみしさに添い寝していた状態だったのが、その日を境に人生ががらっと変わる。出会いのきっかけなんて、さまざまだ。
例えば、それほど情熱的になれない男友達に誘われて海辺にいった娘がいるとしよう。海を見下ろす欄干の上に置いたバッグが、ふとした拍子に落ちて海中に沈んでしまう。中には大切なものがいくつも入っていた。どうしよう、と思ったとき、近くで見ていたサーファーの青年がたちまち海に飛び込んで、そいつを拾い上げてきてくれた。男友達の出る幕なんてぜんぜんなし。そんなきっかけで男女が出会うのは、ニコラス・スパークスのベストセラー小説『きみを想う夜空に』(雨沢泰訳、エクスナレッジ)を原作にした映画の冒頭シーンだ。娘のサヴァナ役にアマンダ・サイフリッド、青年のジョン役にチャニング・テイタムが起用されて仕上がったラッセ・ハルストレム監督作品「親愛なるきみへ」は、9月23日から全国ロードショーが始まる。
 おっと、メリッサ・モーガンだった。ニューヨーク生まれ。ニューヨーク州立大学パーチェス・カレッジ音楽院でジャズボーカルの学位を取得したというから、筋金入りの経歴だ。2004年には伝統のセロニアス・モンク・インターナショナル・ジャズ・ボーカル・コンペティションで準決勝にまで進出している。本アルバムにて世界デビューを果たした。
表題曲のほか「セイヴ・ユア・ラヴ・フォー・ミー」「イズ・ユー・イズ・オア・イズ・ユー・エイント・マイ・ベイビー」「ヒー・ラヴズ・ミー・アイ・シンク」「ザ・ランプ・イズ・ロウ」「クール・クール・ダディ」など、スタンダードを中心に全12曲を収録している。バックでストレート・アヘッド(4ビート)な演奏を展開するのはピアノ、ベース、ドラムス、ギター、トランペット、アルトサックス、テナーサックス、トロンボーンといった編成だ。歌もサウンドも魅惑的。このアルバムに出会えて本当によかったと、しみじみ思う。

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