2011年7月19日火曜日

奈良市に映画館なし…「日本唯一の県都」の事情

複数のスクリーンを備えたシネマコンプレックス(シネコン)と呼ばれる映画館が日本各地に広がり、3D(立体)映画の普及も加わって映画界は活況を迎えているが、約37万人の人口を抱える奈良市には現在、映画館がない。県庁所在地で映画館がないのは徳島と2市のみだが、徳島市には来春にも映画館が開館する予定で、奈良は来年、唯一「映画館ゼロの県都」になる見込みになってしまった。なぜ奈良にはないのか。識者からは「娯楽を大阪に依存してきた地域性」との指摘も聞こえてくる。
 奈良市中心部から車で約20分ほどの場所にある奈良県大和郡山市の大型商業施設内に今月1日、9スクリーン完備の「シネマサンシャイン大和郡山」がオープンした。座席数計約1600席。スクリーンが大きく、3Dなど高品質な映像で臨場感が味わえるのが「売り」だ。
 一方、同市に隣接する奈良市では、近鉄、JR奈良駅近くにあった唯一の映画館「シネマデプト友楽」が昨年1月、68年の歴史に幕を下ろした。
 全国の映画館でつくる「全国興行生活衛生同業組合連合会」(東京)によると、県庁所在地で映画館がないのは奈良と徳島のみという。
 ところが、徳島市には映像製作会社が来春にも常設の映画館を開館する計画があり、県庁所在地で映画館ゼロは奈良だけになる。
 奈良市に映画館がない理由について、地域づくりに詳しい奈良県立大地域創造学部の村田武一郎教授は「奈良市は、大阪のベッドタウンとして発展してきた。もともと大阪と関わりのある人が多く、商業施設や大型の劇場など、高次商業機能はすべて大阪に依存してきたからではないか」と分析する。
また「映画館」自体の形態も変遷。山梨県立大国際政策学部の前沢哲爾教授(映像メディア論)によると「高度経済成長期は娯楽といえば映画で、中心市街地に映画館がいっぱいあった」が、今やシネコン全盛。シネコンは郊外型のショッピングセンターに併設されることが多く、「中心市街地(の映画環境)は疲弊しており、単独の映画館がなくなるのは、宿命的な流れ」と話す。
 シネマサンシャイン大和郡山によると、「観客動員は順調に推移しており、3D版シアターはかなり人気を集めている」といい、1日で千人近くが訪れているという。奈良市では昨夏、出身の河瀬直美監督も出席して、国内外の作品を上映する「なら国際映画祭」が初めて開かれ、今後の隔年開催も決定。映画に対する市民の関心が高まるかどうかも、“復活”のカギになりそうだ。

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